私はよく「作業効率」とか「合理的に製作する」というようなことを言っています。
違う言葉で言えば、製作におけるムダを排除して、効率よく製作するということを意味しているのですが、この合理的が過ぎてしまうと味気ないモノになってしまこともあります。
このさじ加減が重要なところであり、作り手の考え方やセンスによるところが大きく影響する部分です。
たとえば、私がパターンを製作する場合、理屈が7割で感覚が3割くらいのバランスで製作しています。
というのも、イギリスの靴のパターンというのがそのように製作するようになっていて、たとえばくるぶしの高さとか屈曲する部分とか、いわゆる靴の主要なポイントはすべて数値で決まるようになっているのです。
私が指している部分がVamp Point と言いまして、パターンを作る際の基本になる部分なのですが、この位置も数値で決まります。
数値で決まりますから、ノーズが長いラストの場合にも変わりませんし、同じようなパターンをいくつ作っても、その都度位置が変わってしまうということもありません。
これは、オックスフォード(内羽)でもギブソン(外羽)でも同じです。
パターンに関してはイギリスの学校で全く違う2つのやり方を学びましたが、どちらもアプローチが異なるものの、結果的にはほぼ同じものができるというもので、基本は数値です。
そんな理屈が7割くらいを占めるイギリス的なパターンのつくり方が、私には妙にしっくりきます。
また、製作の際にクオリティを維持できる作業においては機械を使い、機械を使うとクオリティが落ちてしまうような場合は手作業で行うということも、合理的な考え方だと思っています。
なので、ラスティングやウェルティングは手作業で行っていて、手作業で行うメリットを十分に生かした靴を製作しています。
靴のコバを削る作業やだし縫いに関しては、工業製品として見たときに、機械を使ってもクオリティが落ちるとは考えられず、むしろ機械を使うことで時間が短縮するという作業効率の向上が認められるので、私は積極的に機械を使うようにしています。
そんなことを言うと、オーダーメイドなのに極めて一辺倒で味気ないモノ作りをしているように聞こえてしまうかもしれませんが、決してそんなことはありません。
いくら少量生産といえども製品のクオリティにバラつきがないように、そしてムダな作業で無意味に価格が高くならないようにということを考えた上でのことです。
さらに言えば、ラストの調整において、お客様の足の特徴に対してどのようなフィッティングの味付けを加えるかとか、
パターンの製作において、いじることができる範囲でどのような雰囲気に仕上げるかとか、
ラスティングにおいて、どのようにして革の特性を生かし、包み込むような優しい履き心地を実現するかとか、型崩れしにくいつくりにするかとか、
ウェルティングやそのあとのセッティングにおいて、どのように疲れにくいつくりにするかとか、快適に歩いていただける仕様にするかなどを考え、
お客様の目的に合わせた靴にするかを楽しんでいます。
オーダーメイドの靴を作るなんて言うと、ちょっとしたデザインのラインとかステッチなどから始まって、いじることができる項目があまりにも多すぎるので、
私にはこれくらいの制約があって、それこそお客様からは見えないけれど、実際に永く履いていただいた時にその違いを実感していただける部分のさじ加減をいじれるくらいのほうが合っているのかもしれません。
なんたって、古くは「羊の革をかぶった狼」という言葉にあこがれた世代ですから。
合理的とは、決して優等生ぶって環境に良いとかゴミを少なくするとか、味や雰囲気まで削減してしまうなどということを目的としているのではなく、
よくよく考えて作ると最終的にはこうなるんじゃない?というところを目指して、本当のムダを削っていくことだと理解しています。
だから、昔のキャブレター仕様のクルマはムダではないですし、めちゃくちゃ燃費の悪いバイクだってムダではありません。
単に好きか嫌いかとか、環境に良いか悪いかとか、安全か否かという尺度の違いに過ぎないことです。
シューリパブリックでは、日常仕様の快適オーダーメイド靴をお作りしています。
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