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叩いて成形

カテゴリー: Hidden Story:こぼれ話

靴のラスティングでは、ピンサーで引いてクギで仮留めをし、その後ハンマーで叩いて形をキレイに整えます。 靴の形を滑らかにするのはもちろんのこと、インソールの角の部分(ラストで言えばフェザーエッヂ)のパリッとした仕上がりも靴の出来に大きく影響を及ぼすのです。 これはフェザーエッヂを少しだけ叩いた状態です。 光を当ててみると、まだ少し凸凹しているのがわかります。 こちら側はまださらに甘い感じですね。 なので叩きます。 たくさん叩いて叩いてラインがパリッとまっすぐになるように叩きます。 時々、靴をハンマーで叩くのってキズが付いたりしないのか、もしくは革を傷めたりしないのかということを訊かれるのですが、靴の世界では革を叩くのが極めて一般的で、そのためにハンマーの面を常にキレイに保っています。 余談ですが、使い込んだハンマーの面はまるで鏡のようにピカピカなのです。 そんなわけで、靴をパリッと仕上げるためにハンマーで叩いてキレイにします。 とりあえず、これくらいまで叩いてこの工程はひとまず終了。 このあとさらに次の工程でつま先周りをキレイにするので、そのときにまた叩いて、必要であれば熱ゴテも使ってパリッと仕上げます。 出来の良い靴は、そこそこ厚みのある革でもパリッと仕上がっているもので、もちろんパリッと仕上がることが目的ではありませんが、正しいラスティングの先にはパリッと仕上がっていることがあることはほぼ間違いないと思います。 ★★★お知らせ★★★ ★オーダーメイド靴をご注文の際には、事前にご予約をいただいたうえでお越しいただいております。  私たちの工房のスケジュールはこちらをご参照下さい。  打ち合わせ等でお越しいただく場合のお時間は、10時、13時、16時の中からお選びください。  ご検討中の方は、見学も大歓迎です。  また、オンラインによる見学や打ち合わせにも対応させていただいております。 ★メールアドレスは info@shoe-republic.com です。

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モンキーブーツ

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モンキーブーツ

イギリス靴の中でもかなりカジュアルテイストが強いモンキーブーツですが、このブーツは非常によく考えられています。 まず、アイレットがかなり前の方まであるので、 靴ヒモで調整をすることができます。 ちょっと厚い靴下を履くとき、昨日ちょっと飲み過ぎて足がむくんでしまっている時、ギュッとヒモを締めてたくさん歩くとき、その時の好みに合わせて調整できるのは大きなメリットです。 また、何年も履いているとこのモデルは比較的ベロに負担が多くかかり、ベロが擦れてしまう傾向がありますが、 ベロのハギはこの位置にあるので、八方ミシンがある修理屋さんであれば結構簡単に新しいベロに付け替えることが出来ます。 ところで、なぜこのモデルはモンキーブーツと呼ばれるのかという話ですが、私が聞いた説は、 こうして見た時に、サルの顔に似ているから。 説は他にもありそうです。 いずれにしても、モンキーブーツはとっても素晴らしいブーツです。 ★★★お知らせ★★★ ★雨の日にも気兼ねなく履ける靴のご注文を受け付けています。    詳細は、6月6日の記事をご覧ください。 ★オーダーメイド靴をご注文の際には、事前にご予約をいただいたうえでお越しいただいております。  私たちの工房のスケジュールはこちらをご参照下さい。  打ち合わせ等でお越しいただく場合のお時間は、10時、13時、16時の中からお選びください。  ご検討中の方は、見学も大歓迎です。  また、オンラインによる見学や打ち合わせにも対応させていただいております。 ★メールアドレスは info@shoe-republic.com です。    

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クギ

カテゴリー: Hidden Story:こぼれ話

クギ

その前に、昨日の記事の中で書いたソケットレンチの件(訳あってソケットレンチからドレンボルトが抜けなくなったという話)ですが、お客様のYさんに対処の方法を教えていただきまして早速やってみました。 それは、万力にソケットレンチを固定し、貫通ドライバーを使ってハンマーでひっぱたいて、ドレンボルトを外すという方法で、貫通ドライバーの代わりに8㎜径の鉄の軸があったのでそれを使ってやってみて秒で解決しました。 Yさん、ありがとうございました。 ドレンボルトは傷ついてもボロボロになっても良いと思っていましたが、結局どちらもほぼ無傷で救出することができました。 スッキリです。 さて、以前にもお伝えしたことがあるのですが、靴づくりにおいてはところどころでクギを使います。 靴の仕様によって多少変わってくるのですが、このクギはどの仕様でも必ず使っています。 これは、カカトをしっかりと固定するために内側から打っているもので、作り手によって使う釘が変わることもありますが、私たちシューリパブリックではおそらくもっとも抜けにくいと思われるRS(リングシャンク)クギを使っています。 そのほか、シングルヒール仕様ではウェルトを縫い付ける代わりにヒールシートやソールをそれぞれクギ留めしているのですが、そこで皆さんに気にかけていただきたいとこがあります。 皆さんは、靴を脱ぎ時にどうやって脱いでいますか? 靴ヒモはほどくとして、どこを持って脱ぐかということですが、もし積み上げ部分を持っていたり、もしくは手を使わずに右足で左足の靴を踏んで脱ぐような脱ぎ方をしていませんか? 上記のように靴のカカトは後付けでクギ留めになっています。 ということは、毎回靴を脱ぐたびに後付けのカカトを引っ張られたら、もしかしたらカカトが外れてしまうなんてことも(可能性は低いですが)あるかもしれません。 なので、靴を脱ぐときには靴ヒモをほどいたのちにアッパーのカカトの芯の部分を持って脱ぐようにしてください。 実際には、そう簡単に壊れるような作りではありませんが、もしものことを考えてより安心な取り扱いをお願いいたします。 ★★★お知らせ★★★ ★雨の日にも気兼ねなく履ける靴のご注文を受け付けています。    詳細は、6月6日の記事をご覧ください。 ★オーダーメイド靴をご注文の際には、事前にご予約をいただいたうえでお越しいただいております。  私たちの工房のスケジュールはこちらをご参照下さい。  打ち合わせ等でお越しいただく場合のお時間は、10時、13時、16時の中からお選びください。  ご検討中の方は、見学も大歓迎です。  また、オンラインによる見学や打ち合わせにも対応させていただいております。 ★メールアドレスは info@shoe-republic.com です。

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オックスフォード

その前に、全くの余談なのですが、つい先日ウチの家内のクルマのオイル交換をしようと思いまして、工房から必要な工具を持って行って自宅前で作業を始めたのですが、 ソケットレンチとラチェットの差込角が合わなくて(ソケットレンチの方を間違えまして)、また取りに行くのも面倒なのでメガネレンチを使ってドレンボルトを開けようとしたら固くて回らず、 クルマの下の狭いところでそんな力も出ずに頑張っていたのですが、運悪くドレンボルトの頭をなめてしまい、ただそれほど深刻な状況ではなかったので無理をしないことにして一度中断しました。 そして今日仕事の後に、今度はもっと強力な工具を持ってオイル交換に臨みました。 ラチェットよりももっと力が入るスピンナハンドルという工具をソケットレンチにつけてドレンボルトを回そうとしたのですが、前回ドレンボルトの頭を少々なめてしまったためにソケットレンチがうまく入りません。 このままだとオイル交換ができないので、考えた結果、力わざでソケットレンチをハンマーで叩き込み、 エイヤッ! と力を込めて回したところ、やっとの思いでドレンボルトを回す事が出来ました。 ちょっとでも回ってくれればあとは手の力だけで楽に回るので、スピンナハンドルを外してソケットレンチとともにドレンボルトを外しました。 ウチの家内のクルマはスズキのスイフトというモデルなのですが、スズキのクルマのドレンボルトは14㎜でちょっと弱々しいんですよね。 何かもっと丈夫なドレンボルトがないかと探していた時に、ちょうど運よくホームセンターに頭だけ17㎜のスズキ用のドレンボルトがあったため、それを買ってきてあったので、今回はそのちょっとだけ頭が大きくなったドレンボルトを取り付けて、オイルを入れてオイル交換は無事に終了しました。 ただ、ひとつだけ問題が発生しまして、 こんな状態で、ドレンボルトに力わざでハンマーでひっぱたいて叩きこんだソケットレンチが抜けなくなりました。 これは、やり方はいくらでもありそうなので、時間のある時に楽しみながら外してみたいと思います。 私は、このような問題をどうやったら解決するのかをじっくり考えるのがとても好きで、今からとってもワクワクします。 とってもスマートに解決できると、数学の問題が解けた時みたいに嬉しいですよね。 すみません、どうでもいい余談が長くなってしまいました。 今日、Tさんが新たな靴のご注文のためにお越しくださいました。 その靴のことは、また完成したときにお伝えするとして、今回はTさんが履いてきてくださったオックスフォードのことをお伝えしたいと思います。 こちらのオックスフォードは、昨年の秋にご注文いただいたもので、今年の春に完成しました。 完成してからおうちの中で履いて慣らしていらっしゃったそうで、今日初めて外で履くのだそうです。 じつはこのオックスフォード、Tさんのこだわりがたくさん詰まっているのです。 特にTさんがおっしゃっていたのが、キャップの位置です。 以前にあるお客様のオックスフォードが完成して写真を載せた時に、Tさんがご覧になってそのバランスを大変気に入ったとということがありました。 おそらく、普通に見たら何が違うのか全く分からない程度のことかもしれませんが、こだわりがある方と作り手である私にはわかるのです。 このオックスフォードのキャップも同じようにしてありまして、標準的な仕様よりも1.5㎜ほどキャップの端が小さくなっています。 このバランスはパッと見た時にとっても自然で、なおかつ屈曲のシワが入る部分が1.5㎜ほど広くなったことでシワが自然に入るようになり、機能面でも良い点がありました。 これは、まさに機能美というヤツですね。 そのほかにも、つま先がシャープに見えるように叩いて叩いてラインを出して、靴の雰囲気が変わりました。 Tさんは、 「私は細かいので・・・。」 とおっしゃっていましたが、作り手の私にとって作業量で済むことは全然苦ではありません。 むしろ、そういうこだわりをお伝えいただいて、少しでもご希望に沿ったものができる事が作り手にすればとっても嬉しいのです。 普段やらないような、例えばスキンステッチとかカカトのハギがないようなデザインとは違って、Tさんのご依頼はどれもすんなり受けることができる事ばかりで、私も毎回楽しみです。 次の靴は、またTさんのこだわりが詰まったものになっています。 こちらは、完成したときにご覧いただきますので、ぜひお楽しみにお待ちください。 ★★★お知らせ★★★ ★雨の日にも気兼ねなく履ける靴のご注文を受け付けています。    詳細は、6月6日の記事をご覧ください。 ★オーダーメイド靴をご注文の際には、事前にご予約をいただいたうえでお越しいただいております。  私たちの工房のスケジュールはこちらをご参照下さい。  打ち合わせ等でお越しいただく場合のお時間は、10時、13時、16時の中からお選びください。  ご検討中の方は、見学も大歓迎です。  また、オンラインによる見学や打ち合わせにも対応させていただいております。 ★メールアドレスは info@shoe-republic.com です。    

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靴クリームのフタ

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靴クリーム

通常、乳化性の靴クリームを使って靴の手入れをするときに、クリームの量は片足につきコーヒー豆1つ分程度に抑えましょうということを言われます。 コーヒー豆1つ分ていうと、かなり少ないですし、それでどうやって片足に行きわたらせるのかもちょっと気になりますよね。 こちらは、私が普段使っているモゥブレィのシュークリームジャーです。 このクリームを使う時に、皆さんはこれを使っていますか? クリームのフタです。 このフタの裏側は、わざわざこんなふうに銀色の紙のようなものが貼ってありまして、ここに適量のクリームをとって使えるようになっています。 分かりやすいように、先にここにコーヒー豆ひとつ分程度のクリームをとって、それを靴にまんべんなく塗ってあげればOKということになります。 じつは、私は靴の仕事をしていても、このことを知ったのは仕事を始めて何年か経ってからでした。 私のように知らなかったという方がいらっしゃったらこの機会に知っていただければいいなって思いまして、今日書かせていただきました。 適量のクリームをここにとり、私の場合はキッチン用のスポンジを小さく切ったものを使って靴にまんべんなく塗り、その後ブラッシングをしています。 これで塗りすぎることもなく、もし残ってもまた次回使えるので非常に合理的です。 でも、なぜ靴クリームはたくさん塗ってはいけないのかご存じですか? 靴クリームは栄養補給の成分も含んでいるので、たくさん塗ったら革にとって良いのではないかと思うのですが、じつはちゃんと理由がありまして・・・、 靴クリームには栄養補給の成分も確かに入っていますが、ツヤを出すためのロウも入っていまして、そのロウを革にたくさん塗ってしまうと革の中に染み込んでしまい、その後時間が経つにつれてロウが少しずつ硬化し、革も硬化させて表面の亀裂の原因になってしまうのです。 せっかく靴を良い状態に保とうとしてクリームを塗っているのに、革に亀裂が入ってしまうのは困りますよね。 なので、クリームが古くなる前に定期的にクリーナーなどを使ってクリームを落としてあげることが大切なのです。 革を良い状態に保つためには、月に1度くらいの割合でデリケートクリームで保湿をし、そのほかに色のついた乳化性のクリームを使ってメンテナンスをしてあげるようなやり方が良いでしょう。 デリケートクリームだけだと、確かに栄養の補給はできますが、表面の保護としてはちょっと役不足が否めません。 メンテナンス用品を上手にバランスよく使って靴を良い状態に保ってあげることが大切です。 メンテナンスに関しては、絶対にこれが正解ということはなく、皆さんいろいろと考えがあると思いますので、納得できるやり方を実践しましょう。 ★★★お知らせ★★★ ★オーダーメイド靴をご注文の際には、事前にご予約をいただいたうえでお越しいただいております。  私たちの工房のスケジュールはこちらをご参照下さい。  打ち合わせ等でお越しいただく場合のお時間は、10時、13時、16時の中からお選びください。  ご検討中の方は、見学も大歓迎です。  また、オンラインによる見学や打ち合わせにも対応させていただいております。 ★メールアドレスは info@shoe-republic.com です。

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先日ちょっとだけお知らせしたモゥブレィのステインクレンジングウォーターですが、まぁまぁな数が入荷しました。 これはいわゆる汚れ落としの液体なのですが、単にアッパーの汚れ落としだけではなく、インソールのお掃除にも使えるとのことなので1本あると非常に便利だと思います。 この手の汚れ落としは各メーカーからいろいろ出ていますが、私は最近はこればかりです。 何が良いかって、革に対する攻撃がマイルドなところが素晴らしいです。 モノによっては革の色が落ちてしまうものもあったりしますし、染み込みすぎてシミになってしまうようなものもあって、そういう心配がないこのステインクレンジングウォーターは、気兼ねなく使えるという点でも使い勝手が良いのです。 そしてもうひとつ。 モゥブレィのデリケートクリームです。 こちらは定番商品ですね。 革の栄養補給のためのクリームで、普通に靴に使うほかお財布やカバンなどにも使えます。 ひとつあればとっても便利です。 最近は、数あるメンテナンス用品の中でこういう私が心からお勧めするもののみ仕入れるようになりました。 と言って、以前は何でもかんでも仕入れていたのかというとそういうわけではなく、改めて考えるとお勧めするものだけというのは変わっていないのですが、多品種を少しずつという仕入れの仕方から、本当に今必要そうなものをちょっと多めにというスタイルになっています。 さて、今日はあらためてオーダーメイド靴を考えてみたいと思います。 上の写真は、非常にベーシックなオックスフォードですが、この靴はお仕事でスーツを着るときにお履きになることが多いデザインの靴です。 その他には、もっとカジュアルなデザインの靴もいろいろとあるのですが、どんな靴を履いたときでもオーダーメイドの足に合っている靴を履くと、合っていない靴を履いたときと比べて大きな違いがあります。 それは、足の動かし方であり筋肉の使い方なのですが、もっと具体的に言うと、足に合っている靴を履いて歩くときにはよりたくさんの筋肉をしっかりと機能させて歩くことができるのだそうです。 イメージとしては、足袋を履いて歩くような感じでしょうか? ただ、足袋と違うのは革靴はソールが比較的硬くてしっかりしていることや、足をそこそこ硬い革で包んでいることにより、イメージ的にはもっとかっちりとした丈夫なプラットフォームのバケットシート付きのクルマに乗っているようなものとなります。 ちょっと難しい話になりますが、プラットフォームがしっかりしていることとバケットシートに包まれているようなことは足が疲れにくいということですが、それと同時にソールはスニーカーに比べて硬めなので、足そのものが衝撃を吸収する必要があって、歩くたびにそのエクササイズをしているような状態になっていると言えます。 つまり、普段から革靴を履き慣れている方は足がそれだけ鍛えられていて、知らず知らずに疲れにくかったり丈夫になっているという恩恵を被っていると言えます。 オーダーメイド靴は、単に好きな革を選ぶことができるとか、好きなデザインのものを作ることができるなどという外観のメリットだけではなく、機能面でも大きなメリットがあると言えます。 ★★★お知らせ★★★ ★オーダーメイド靴をご注文の際には、事前にご予約をいただいたうえでお越しいただいております。  私たちの工房のスケジュールはこちらをご参照下さい。  打ち合わせ等でお越しいただく場合のお時間は、10時、13時、16時の中からお選びください。  ご検討中の方は、見学も大歓迎です。  また、オンラインによる見学や打ち合わせにも対応させていただいております。 ★メールアドレスは info@shoe-republic.com です。

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ネイビーの革

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ネイビー

今年のゴールデンウィークは、3年ぶりにコロナの規制もなく、昨年や一昨年に比べればお出かけしやすい環境でしたね。 皆さんはどこかにお出かけされましたか? 私は毎年ゴールデンウォークは普通に営業しているので、今年も特にどこかに出かけるということはありませんでしたが、ちょっと前に仕事で長野に行きましたし、もう少し経てばまた神戸や大阪のお取引先のお店にお邪魔すると思うので、それを楽しみにしていようと思います。 さて、今日はネイビーの革の話です。 茶色の革と同様に、ネイビーの革も一口にネイビーといえども微妙に色合いが異なり、さらには革によって風合いも異なるので、もしあなたがネイビーの革でチャッカブーツを作りたいと思っても、革の選択肢はいろいろあるわけです。 ざっとすぐ出せる革サンプルを並べてみただけでも、これだけの種類があります。 向かって左の方はスムースの革で、右の方の革はシボの革です。 全然雰囲気が違いますよね。 ネイビーのスムースの革でオックスフォードやギブソンシューズを作れば、フォーマルな雰囲気に仕上げることもできるのでお仕事で使える靴になります。 一方、シボの革でギブソンシューズを作れば、スムースの革に比べればカジュアルな要素が強くなるので、ジャケットを着てお仕事をするときに履くこともできますし、お休みの日にもっとカジュアルな服に合わせることもできます。 そして、ネイビーの靴の最大の特徴は、落ち着いた色で使い勝手が良いのに、まだまだ履いている人が少ないということ。 そして、色の方向性としては黒に近いので、合わせる服などもそれまで黒い靴に合わせてきたものをそのまま使えるのです。 こんな感じで、黒い革と比べても、大きな方向性の違いは感じられないと思います。 これは重要ですね。 そんなネイビーの革ですが、私たちが在庫している中でちょっとだけ変わりダネのものがあります。 上の写真をご覧ください。 私が持っている革のサンプルと、このギブソンブーツの革は、実は同じものなのです。 Conceria 800という会社の革なのですが、このギブソンブーツは工房にしばらく展示していたら革が焼けて色が変わってしまったのです。 正確に言えば、染料の何かが酸化して変色したというようなメカニズムらしいのですが、この焼けたネイビーの色が格好良いとおっしゃる方が多く、この色にほれ込んだ方はみなさんこんな色になるように育てていらっしゃいます。 写真の革はConceria 800社の Vacchetta 800という革ですが、このほかに同じくConceria 800社のMotownという革も似たような変化をします。 この変化は結構短時間に起こるようで、履き始めてから半年くらいでこのギブソンブーツのような色になってしまうようです。 言ってみれば、自分だけのオーダーメイドの靴を、さらに自分流に育てるということなので、ただ格好良いだけではなく更なる愛着を持って履くことができるのではないかと思います。 気になった方は、是非一度私たちの工房にて元の革とこのブーツを比べてみてください。 ★★★お知らせ★★★ ★大変お買い得なラスト付きの企画商品「フレッシャーズプラン」は、期間限定で発売中です。  詳しくは、4月28日の記事をご覧ください。 ★オーダーメイド靴をご注文の際には、事前にご予約をいただいたうえでお越しいただいております。  私たちの工房のスケジュールはこちらをご参照下さい。  打ち合わせ等でお越しいただく場合のお時間は、10時、13時、16時の中からお選びください。  ご検討中の方は、見学も大歓迎です。  また、オンラインによる見学や打ち合わせにも対応させていただいております。 ★メールアドレスは info@shoe-republic.com です。

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ギブソンシューズ

何かを学ぶとき、どこで何を学ぶかということは、非常に重要だと思っています。 何を学ぶにしても、最初に学んだものがその人の基本となるわけで、その後学んだものは良いとか悪いとかいうことよりも、自分の知っているものとは違うと判断してしまって、なかなか新しいモノを柔軟に受け入れにくいものです。 もちろん、今日まで淘汰され受け継がれているものはちゃんと理由があってそうなっているのであり、それらはどれもすばらしいものであることは間違いありません。 そんな中で、私が学んだイギリスの靴づくりは私の考え方に非常に合っていて、全く違和感なくその世界にどっぷりとハマることができました。 しかしながら、帰国して日本の靴メーカー(結構歴史のある会社でした)に勤めてそこで見た靴は私が知っているものとは大きく異なっていて、似たような形をしているものなのに、文化や考え方でこんなに違うものなのかとショックを受けたのを覚えています。 イギリスの靴は、いや靴に限ったことではありませんが、イギリスでは良いものを賢く買って修理をしながら永く使うことが基本で、だからこそイギリスの製品はこれでもかというくらい丈夫であり、永く使うために修理ができることが前提となっています。 修理ができるということは基幹部分は壊れにくく、壊れるところは容易に修理ができるようになっているわけで、その辺りのメリハリは素晴らしいと言える部分です。 それを踏まえて・・・、 こちらは、先日私が靴の王様と称したギブソンシューズです。 このギブソンシューズもイギリスの考え方がびっしりと詰まっています。 例えばこの部分、タブと言いますが、この部分は力がかかるところなので、靴を履いていて多少荒っぽく履いても裂けないようにという補強の目的で存在しています。 じつはこのタブはなかなか細かく場所が決められていて、ここにあるからこそ補強の役を果たしており、革が裂けにくくなっていたり糸が切れにくくなっているのです。 そのうえで、最悪許容量を超えた力がかかった時には糸が切れるように計算されています。 ステッチが切れてしまった時には比較的簡単に修理をすることができますが、革が切れてしまった時には修理が大変ですから。 これは非常に重要なポイントで、クォーターライニングも一緒に縫い付ける構造になっていて、十分な強度を出しています。 ただそうなると縫われている相手の革が裂けてしまったらそれこそ面倒ですよね。 力がかかるうえに、言ってみればVのような形状になっているために避けてしまう可能性が高くなります。 でも、その辺りのイギリス靴はかなり考えられていて、写真ではちょっと見づらいですがタンの付け根の部分がシッポのように延びていて、このタブのところにまで補強として入っているのです。 つまり、このタブのステッチはクォーター、クォーターライニング、ヴァンプ、タン、ヴァンプライニングの革5枚を縫い合わせていて、十分な強度を出したうえで、もし壊れる時には革2枚重ねや3枚重ねよりは弱いステッチが切れるように作られているという訳です。 これがイギリスの丈夫で基幹部分は壊れにくいという考え方の例です。 19世紀のころから改良され続けて今に伝わるイギリスの靴は、本当によく考えられて作られており、ぜひこの靴のすばらしさを21世紀で体験してほしいと思っています。 ★★★お知らせ★★★ ★オーダーメイド靴をご注文の際には、事前にご予約をいただいたうえでお越しいただいております。  私たちの工房のスケジュールはこちらをご参照下さい。  打ち合わせ等でお越しいただく場合のお時間は、10時、13時、16時の中からお選びください。  ご検討中の方は、見学も大歓迎です。  また、オンラインによる見学や打ち合わせにも対応させていただいております。 ★メールアドレスは info@shoe-republic.com です。

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シングルヒール

ハンドソーンウェルテッドの靴では、ウェルトをぐるりと一周縫うやり方(ダブル)と、カカトの周りだけはウェルトをつけないでヒールを小さくするやり方(シングル)という、2つの方法があります。 こちらの靴がシングル仕様のものです(製作途中ですみません)。 こんな感じで、ウェルトが途中で終わっていて、ヒールは小さめなものがついています。 繰り返しになりますが、この靴はまだ製作途中のものなので、仕上げもしてなければコバのポリッシュもしていません。 フォーマルなイギリス靴と言えば、有名なブランドものだとむしろこのシングル仕様モノの方が多いのではないかと思うほどです。 ぐるりとウェルトを一周縫うダブル仕様は、つま先だろうがカカトだろうがリブにウェルトを縫い付けているので構造的なことはなんとなくイメージができると思いますが、このシングル仕様はというと、じつはいくつかの手法があります。 そのなかで、私たちシューリパブリックの靴は、基本的なグッドイヤーウェルテッドの靴と同じクギ+接着で留める方法です。 クギの頭が10個見えるのは、内側からヒールを留めているものなのでそれではなく、その周りにクギの先のようなものがちょっとだけ見えているのが分かりますでしょうか? これは、ラストの底面に鉄板がついていて、外側(ソール側)からクギを打つと先が鉄板に当たって曲がって抜けなくなるということを利用してヒールシートを留めているわけです。 ちなみに、この靴にはクギの頭が見えている10本のクギを除いて、ヒールシート側から片足につき27本のクギを打っています。 カカトのラスティングで9本、ヒールシートの固定のために9本、そしてこの仕様はカカト周りにだし縫いがかからないのでソールを留めるために9本、さらにこの頭が見えている10本のクギもインソールとカカトの積み上げをしっかりと留めているので、結果的にヒールシートをサンドウィッチにして固定していることになります。 クギ使い過ぎです。 ★★★お知らせ★★★ ★オーダーメイド靴をご注文の際には、事前にご予約をいただいたうえでお越しいただいております。  私たちの工房のスケジュールはこちらをご参照下さい。  打ち合わせ等でお越しいただく場合のお時間は、10時、13時、16時の中からお選びください。  ご検討中の方は、見学も大歓迎です。  また、オンラインによる見学や打ち合わせにも対応させていただいております。 ★メールアドレスは info@shoe-republic.com です。

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クギ穴の話

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クギ穴

靴のクギ穴の話と言えば、よく聞くのがカカトの履き口近くにあるアレですよね。 この靴では、ドッグテイルのすぐ下のところに空いています。 作る側もなるべく目立たないようにという気持ちでやっていますが、デザインによってはどうしても目立ってしまうこともあります。 この穴は、決してプライスタグのヒモを通すための穴ではありません。 ラスティングの際にこうしてカカトが落ちてこないように仮留めをするためのクギの穴です。 キレイなアッパーに穴を開けてしまうというのはやっぱり心苦しいですよ。 でも、それよりもしっかりと靴を作ることの方が大切なので、結局はこのようにカカトの所にくぎを打ってアッパーを仮留めしています。 じつは、靴にはそのほかにもクギを打って穴を開けていることろがたくさんあります。 例えばここ。 インソールを仮留めする時に、片足につき3~4本のクギでインソールを仮留めしています。 私の場合は、片足につき4本のクギで留めています。 また、もうすでに写真に見えていますが、手作業でラスティングをする際にはアッパーをクギで仮留めする必要がありまして、 こんな感じで端をグルリと一周クギを打っています。 これに関しては、機械でラスティングをした靴はクギではなく接着されているケースが多いのでこのラスティングのクギの穴はありません。 ただ、似たような穴が空く作業がありまして、ラスティングよりもずっと前で、加工前のインソールを濡らしてラストに打ち付けてラストの反りに合わせる時にクギを打って仮留めします。 クギを打つ位置も、ラスティングの時と大体同じような位置になりますが、その穴がラスティングの際のモノか、もしくはインソールのクセ付けの時のモノかを見分ける方法があります。 それは、ラストのクセ付けの時のクギは、濡れているインソールに打つので黒っぽい錆のような跡が見られます。 つまり、穴が黒っぽくなっていればインソールの癖付けの穴で、キレイなままであればラスティングの時の穴ということになります。 ちなみに、私ちゃちシューリパブリックの靴の場合は、インソールの癖付けの時もラスティングの時にもクギを打っているので、黒い錆の穴とキレイな穴が混在しています。 ★★★お知らせ★★★ ★オーダーメイド靴をご注文の際には、事前にご予約をいただいたうえでお越しいただいております。  私たちの工房のスケジュールはこちらをご参照下さい。  打ち合わせ等でお越しいただく場合のお時間は、10時、13時、16時の中からお選びください。  ご検討中の方は、見学も大歓迎です。  また、オンラインによる見学や打ち合わせにも対応させていただいております。 ★メールアドレスは info@shoe-republic.com です。

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