何かを学ぶとき、どこで何を学ぶかということは、非常に重要だと思っています。
何を学ぶにしても、最初に学んだものがその人の基本となるわけで、その後学んだものは良いとか悪いとかいうことよりも、自分の知っているものとは違うと判断してしまって、なかなか新しいモノを柔軟に受け入れにくいものです。
もちろん、今日まで淘汰され受け継がれているものはちゃんと理由があってそうなっているのであり、それらはどれもすばらしいものであることは間違いありません。
そんな中で、私が学んだイギリスの靴づくりは私の考え方に非常に合っていて、全く違和感なくその世界にどっぷりとハマることができました。
しかしながら、帰国して日本の靴メーカー(結構歴史のある会社でした)に勤めてそこで見た靴は私が知っているものとは大きく異なっていて、似たような形をしているものなのに、文化や考え方でこんなに違うものなのかとショックを受けたのを覚えています。
イギリスの靴は、いや靴に限ったことではありませんが、イギリスでは良いものを賢く買って修理をしながら永く使うことが基本で、だからこそイギリスの製品はこれでもかというくらい丈夫であり、永く使うために修理ができることが前提となっています。
修理ができるということは基幹部分は壊れにくく、壊れるところは容易に修理ができるようになっているわけで、その辺りのメリハリは素晴らしいと言える部分です。
それを踏まえて・・・、
こちらは、先日私が靴の王様と称したギブソンシューズです。
このギブソンシューズもイギリスの考え方がびっしりと詰まっています。
例えばこの部分、タブと言いますが、この部分は力がかかるところなので、靴を履いていて多少荒っぽく履いても裂けないようにという補強の目的で存在しています。
じつはこのタブはなかなか細かく場所が決められていて、ここにあるからこそ補強の役を果たしており、革が裂けにくくなっていたり糸が切れにくくなっているのです。
そのうえで、最悪許容量を超えた力がかかった時には糸が切れるように計算されています。
ステッチが切れてしまった時には比較的簡単に修理をすることができますが、革が切れてしまった時には修理が大変ですから。
これは非常に重要なポイントで、クォーターライニングも一緒に縫い付ける構造になっていて、十分な強度を出しています。
ただそうなると縫われている相手の革が裂けてしまったらそれこそ面倒ですよね。
力がかかるうえに、言ってみればVのような形状になっているために避けてしまう可能性が高くなります。
でも、その辺りのイギリス靴はかなり考えられていて、写真ではちょっと見づらいですがタンの付け根の部分がシッポのように延びていて、このタブのところにまで補強として入っているのです。
つまり、このタブのステッチはクォーター、クォーターライニング、ヴァンプ、タン、ヴァンプライニングの革5枚を縫い合わせていて、十分な強度を出したうえで、もし壊れる時には革2枚重ねや3枚重ねよりは弱いステッチが切れるように作られているという訳です。
これがイギリスの丈夫で基幹部分は壊れにくいという考え方の例です。
19世紀のころから改良され続けて今に伝わるイギリスの靴は、本当によく考えられて作られており、ぜひこの靴のすばらしさを21世紀で体験してほしいと思っています。
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