ハンドソーンウェルテッドの靴を作る際に、日本ではほぼ必ずと言って良いほど必要なのがこれです。
松脂にサラダ油をブレンドして作る、特製のワックスです。
ワックスと言えども、ロウは全く入っていません。
日本では、「チャン」と呼ばれています。
この松脂のワックスは、ハンドソーンウェルテッドの靴のどこに使うのかと言いますと、ウェルトをかけるときの糸に塗って使います。
それもただ塗るだけではなく、塗った後に布でしごいて熱をかけて内部に浸透させて、その後表面にビーズワックスを塗って糸が出来上がります。
もっと本格的にやっている方々は、糸を自分で撚るところから始めるそうですが、私たちの場合はすでに9本で撚ってある糸を買ってきてそれを使っています。
この松脂ワックス、もともとはこんなキレイなものなのです。
これが松脂なのですが、これを鍋でコトコトと温めて溶かして、そこにサラダ油(精製してある油なら良いそうです)を少し加えて完成します。
厄介なのは、この硬さなのですが、あまり柔らかすぎると溶け出してしまって糸の強度が落ちてしまいますし、硬すぎると十分に糸の内部に浸透させることが難しくなります。
サラダ油の加減で硬さが変わるため、その季節に合った正しい硬さに作ることが要求されます。
でも、そもそもどうしてこの松脂ワックスを麻糸に塗るのかと言いますと、
麻糸はそのままでもそこそこの耐久性はあるものの、長期にわたって過酷な環境にさらされる靴には不十分で、松脂ワックスでコートをすることで麻糸自体の劣化を防ぐ効果が期待できるのです。
しっかりと糸の内部まで松脂ワックスを染み込まで、丈夫な麻糸にして靴を作る必要があるわけです。
そう考えると、どんなに麻糸を松脂ワックスで保護しても、靴が常に湿気の多い環境にさらされていたり、極度に乾燥した環境に置かれていては、松脂ワックス自体の劣化のリスクがあるため、
この麻糸を保護するためにも、靴の内部に湿気が溜まらないよう、1回履いたら最低2から3日以上の休養をさせることや、ホコリを落とすメンテナンスをお願いしているのです。
あまり知られていないことなのですが、ハンドソーンウェルテッドの靴の場合、ウェルトを縫っている糸は靴を履いて歩くたびに極めてわずかですが動いています。
松脂ワックスで保護してある糸の周りに湿気があるとき(どうやら濡れているときよりも湿気がある程度の方が環境が過酷のようなのです)に靴を履くと、松脂ワックスがこすれて剥がれてしまうメカニズムのようです。
できればそんな深い部分においても理解していただいて、そうじゃなくても難しいことではありませんのでしっかりとローテーションを守っていただいて、
靴を永く愛用していただきたいと思います。
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