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ヒールピッチの話

カテゴリー: Hidden Story:こぼれ話


靴作りの世界では普通に当たり前のようになっていることでも、一般的に見ると当然のことながらあまり知られていないことがたくさんあります。

靴の世界にどっぷりと浸かってしまっていると、つい感覚が麻痺してしまいます。

昨年の暮に、神戸のSUNさんにて人生初のオーダーのジャケットをお願いしたときには、

靴の世界と違って、こんなオプションもできるとか、このオプションは見た目に反して手間がかかって大変などということを、なんとなくですが知ることができました。

そういえば、近くのショッピングモールにあるシャツのお店に行って話を聞いたときにも、

襟の形とか袖の長さを調整するとか、靴のパターンを作っているものからすればそれはなかなか大変そうだと思うようなオプションがある反面、シャツ自体の丈は変えられないということがあって、そのシステム上の都合もあるのだろうと思った記憶があります。

その時のお客である素人の私にしたら、どれができてどれができないなんて推測の範囲でしかありませんから、お店で詳しく教えていただくしかありません。

 

思い出すのが、私がまだ靴のメーカーに勤めていて靴のパターンを作る仕事をしていた頃に、お取引先のあるデザイン担当の方から、

「タブの位置をあと2ミリ後ろにずらしてくれる?」

と言われたことがあって、言う方はたかだか2ミリだから簡単にできるだろうと思っているかもしれませんが、その修正は完全にパターンの作り直しになるモノであり、仕事ですから言われたとおりにしますが、多分理解してもらえてないだろうなぁって思ったということがありました。

昨今のシステムの仕事をされているSEの方においても、

「ちょっとこんな風に動くようにしてよ。」

と簡単に言われることがとっても大変な作業なのと同じです。

いや、システムの仕事のほうが大変ですね、きっと。

 

靴の製作に関することでは、

ご注文の際に稀に言われることなのですが、カカトの高さを少し高くするのは、じつはとっても困難なことなのです。

その理由は、

ラスト

これが靴のラストで靴の基本的な形のもととなるものなのですが、これは木型屋さんに発注するときにNC旋盤で単に大きい小さいの注文は可能ですが、それ以上の例えば折り曲げた形にするとかねじるなどの注文はできません。

また、ラストは接地点が決まっていて、それにとともにヒールピッチ(ヒールの高さ)やトゥスプリングの高さ(靴になったときにつま先が浮いている高さ)も決まっているため、むやみにヒールの高さを変えることができません。

もしヒールの高さを変えてしまうと、かなり極端な例ですがこんなことになってしまいます。

ラスト

まぁ、もしお客様からヒールの高さを変えたいというご希望があったときには、このようなことをご説明してご理解いただいています。

 

ちなみに、どうしてもヒールを高くしたいという場合は、全く新たにラストのモデルを職人さんに削っていただくことから始めなくてはならず、そのあたりの諸費用だけで靴1足分を大きく超える費用がかかってしまいます。

本当に靴づくりの世界の話なのですが、皆さまにも参考までに知っておいていただきたいと思います。

 

お知らせ

【お知らせ1】 次回のRifare大阪店さんでの計測会&オーダー会のイベントは、4月15日(土)に開催です。
Rifare大阪店: 大阪市西区北堀江1-17-11

【お知らせ2】 4月16日(日)には、神戸三宮のSUNさんへお伺いします。神戸周辺にお住まいのみなさま、ぜひお越しください。
SUN: 神戸市中央区北長狭通2-5-5 2F

 

シューリパブリックでは、日常仕様の快適オーダーメイド靴をお作りしています。

スケジュールはこちらをご参照下さい。
打ち合わせ等でお越しいただく場合のお時間は、10時、13時、16時の中からお選びください。

旧ブログ(2016年3月25日まで)はこちら

メールアドレスは mail info@shoe-republic.com です。

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