モノづくりにおいては兎角見える部分には手をかけて、しかしながら見えない部分は手を抜くという傾向があり、私はこれが好きではありません。
例えば、クルマの見える部分であるボディのデザインや内装などにおいてはとことん詰めてクオリティの高いものを作るのに、見えないプラットフォームやサスペンション、さらにはシートのウレタンや消音の素材においては手を抜いてしまうようなものです。
私の考え方が機能優先なのでそうなてしまうのかもしれませんが、見えるところよりもどちらかと言えば見えない部分にこそ手をかけている方が好ましく感じます。
というのも、見えない部分は決して不要な部分ではなく、使っていれば間違いなくその良し悪しに気付く部分ですから。
もし作り手が、ユーザーには気づかないだろうなんて思っているようであれば、それはちょっと問題です。
靴作りにおいては、見えない部分こそ機能面からすれば非常に重要な要になります。
見えない部分と言えば、インソールのクオリティやボトムフィラーの素材、形状、ライニングの素材、そしてライニングのパターンです。
インソールに関しては、以前から何度も書いている通り、ハンドソーンウェルテッドの靴においては適度な厚みがあって適度に密度が詰まっているものが好ましく、ボトムフィラーの素材に関しても単にコルクが良いということではなく、使う目的によってベストなセッティングが異なってきます。
この辺りは、靴になってしまうとなかなか判断が難しいところで、作り手を信頼するしかありません。
ですが、ライニングに関しては、靴になった状態でも十分に判断することが可能で、作り手のポリシーを確認できる部分です。
上の写真は、これからライニングのクリッキングをしようというところです。
ライニングは、極端な言い方をすれば直接足が触れる(靴下を介していますが)部分であり、靴の履き心地を左右する部分でもあります。
吸湿性が良い素材、優しく足を包み込んでくれる素材、足の動きに柔軟に対応してくれる素材、そのような条件を考慮すると、私の考えではタンニンなめしベースの牛革が理想です。
また、パターンによっても靴のクオリティや包み込まれ感が全く違ってきます。
ヴァンプライニング(前半分のパーツ)とクォーターライニング(後ろ半分のパーツ)をどこでどのようなラインでつなぐかによって、履き心地が大きく変わるのです。
イギリスの靴は、とにかく丈夫さと機能、つまり履きやすさが要求されるので、ライニングの作りも非常に考えられたものなのです。
写真の中で、ライニングの革の上にちょこんと置いてあるのがライニングのパターンです。
一見普通のパターンですが、こんな中にもちゃんと考えられたセオリーが詰まっています。
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