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逆算して作ること

カテゴリー: Hidden Story:こぼれ話


先週のコージ製靴新潟工場さんといい、昨日の恵比寿のRifareさんといい、普段工房で作業をしているのとは全く違ってたくさんのお客様に会ってたくさんお話をさせていただきました。

私は靴の作り手として、あまりお客様の耳に届かないような情報をたくさんお伝えしたつもりなのですが、少しでもお役に立てたのであれば嬉しいと思っています。

私たちシューリパブリックの靴は、私に靴つくりを教えてくださったイギリスの靴の学校の先生方や、イギリスの諸先輩方、そしてイギリスの職人の方々のノウハウを基本として成り立っているのですが、

そればかりではなく私が靴を作る上で

「これは改善したほうが良い」

と思った部分は、小さなことではありますがオリジナルの手法になっている部分もあります。

それが、もしかしたらイギリスのどこかの工房と同じ手法かもしれませんし、全くどことも違う手法かもしれません。

とにかく、自分がこれまでに異業種で働いた経験から得たことも含めて、教わったままではない部分があるのです。

ギブソンブーツ

こちらは、工房に展示してあるサンプルのギブソンブーツです。

誰かのために製作したものではないので、ほんの何度かお客様にためし履きをしていただいただけで、その後は工房に展示されています。

このブーツ、じつはカカトの前側(業界の用語でカカトのアゴと言います)が少し浮いているのです。

ギブソンブーツ

本来ならば、靴のカカトはしっかりと面で接するのが正しいのですが、私たちシューリパブリックでは積極的にこのようにカカトのアゴが浮いている靴を作っています。

いやいや、不良品ではありません。

これは計算して作っています。

このアゴの浮き方も、完成したばかりのころはもっと浮いていましたが、やはり何度か履いていただいたことで少し浮きが少なくなりました。

なぜ、このようにカカトのアゴが浮いているのかと言いますと、

私たちシューリパブリックでは主にダイナイトソールを使っていまして、そのダイナイトソールは新しいうちはその形状からセンターの凸1点が接地します。

そして、そのセンターの凸は比較的早くすり減って、その後はその周辺の面が接地するようになります。

また、ハンドソーンウェルテッドの靴は、靴の内部にグッドイヤーウェルテッドほどではないにしてもコルクのボトムフィラーがセットしてありまして、このボトムフィラーは靴を履き込んでいくうちに少しずつ潰れてきます。

つまり、靴を履き込んでいくと靴の前側が少しすり減ったり潰れたりして厚さがうすくなり、結果的に靴が少し前に傾くことになります。

そうなったときに、カカトがちゃんと面で接地するように計算して、このような形状にしてあるのです。

これがレザーソールやタンクソールでしたら、ここまで潰れることはないのかもしれませんが、ダイナイトソールならではのクセと言いますか、ダイナイトならではの変化が発生するわけです。

なので、ブーツならまださほど目立たないのですが、シューズの場合などは履き初めの時に履き口に変な歪みができてしまって、まさに靴が完成してお客様に初めて履いていただくようなタイミングでは、素人の人が作ったような靴に見えてしまいます。

なので、本当は靴が完成したばかりの時の写真は撮りたくないのです。

 

逆算して作っているのはソールやカカトの部分だけではなく、インソールが多少沈んでいくことを計算して、靴そのもののフィッティングを初めはややタイト目にしていたり(お客様によって若干セッティングを変えています)、

やはりインソールが沈んだり革が馴染んでくることを計算してハネの開き具合を少し広めにしていたりということがあります。

この辺りは、ほとんどの靴の作り手さんがやっていることだと思います。

革の特性を知っていくと、いろいろと見えてくることがたくさんありまして、それぞれの革に応じたセッティングや細かい調整をすることが楽しくなってきます。

初めは多少カカトが浮くようなケースも、じつは素材の都合上あえてそうしているということもありますし、お客様の足の形状の都合で初めの1ヶ月半はどうしても折れジワが当たってしまうこともあります。

そうしておかないと、靴が馴染んで落ち着いた時に履きにくい靴になってしまうというのが理由です。

とにかく革は深くて面倒くさくておもしろい素材です。

単に天然素材というだけでは片づけられないところが、じつは革の魅力なのかもしれません。

 

お知らせ

【お知らせ1】 次回のRifare大阪店さんでの計測会&オーダー会のイベントは、4月15日(土)に開催です。
Rifare大阪店: 大阪市西区北堀江1-17-11

【お知らせ2】 4月16日(日)には、神戸三宮のSUNさんへお伺いします。神戸周辺にお住まいのみなさま、ぜひお越しください。
SUN: 神戸市中央区北長狭通2-5-5 2F

 

シューリパブリックでは、日常仕様の快適オーダーメイド靴をお作りしています。

スケジュールはこちらをご参照下さい。
打ち合わせ等でお越しいただく場合のお時間は、10時、13時、16時の中からお選びください。

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メールアドレスは mail info@shoe-republic.com です。

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