すでに何度か書いていることなのですが、ハンドソーンウェルテッドはグッドイヤーウェルテッドの元になった製法と言われているものの、
確かに構造は似ていますが、機能面で見たら全く違うと言っても過言ではないほど異なる製法です。
確かにインソールの裏側にあるリブにつり込んだアッパーとウェルトをまとめて縫い付けるということは同じなのですが、
そのリブの構造や縫い付け方の違い、そして履き込んだ時の靴の変化、さらには靴としての特徴は全く異なるのです。
こちらは、ハンドソーンウェルテッドの靴においてウェルティングまで終わったところの写真です。
なかなかこれくらいの中途半端な状態の写真を見る機会は少ないかもしれませんね。
ウェルトではなく、もう一方の糸が縫ってあるところがリブです。
リブの高さは、ハンドソーンウェルテッドの場合はだいたい2.5ミリ程度。
必要以上に高くする必要はありませんが、作り手の考え方によってリブの形状も変わってきます。
こうして見たときに、この上にソールを貼ってしまうとすると隙間ができてしまうため、その隙間を埋めるためにボトムフィラーとしてコルクを入れます。
コルクの厚さは、グッドイヤーウェルテッドの靴と比べるとかなり薄くなります。
その理由は、リブの高さです。
グッドイヤーウェルテッドのリブの高さは約6ミリ、その分隙間が大きくなるのでコルクの厚さが厚くなります。
ちなみに、グッドイヤーウェルテッドの靴は生産効率を考えて作られていますので、作業において必要なことはやりますが、効率をしっかりと考えられています。
グッドイヤーウェルテッドの靴のインソールの厚さがハンドソーンウェルテッドの約6ミリ(もしくはそれ以上)に比べて半分の3ミリというものが多く、
(ハンドソーンウェルテッドのインソールのサンプルです)
3ミリのインソール+厚いコルクのグッドイヤーウェルテッドに対して、
6ミリのインソール+薄いコルクのハンドソーンウェルテッドということになるので、
この時点で履き心地が違ってきます。
この構造的な違いによって履き心地が変わることのほかに、
主に機械でラスティングをするグッドイヤーウェルテッドに対して、
手作業でラスティングをするハンドソーンウェルテッドという関係があり、
この違いも大きく履き心地に影響を及ぼします。
これはどう違うのかと言いますと、
作業効率を考えて機械で少々きつめにラスティングをおこなうと、どうしても履いた時の当たりが硬くなってしまいます。
早く成形をおこなう場合は、ややきつめに引いてその後にヒートセッターという熱風の機械の中を通り、さらに冷やされて落ち着かせるのですが、
時間に余裕があるなら、適度な力加減で正しい方向に引いて、そのまま数週間くらいラストを入れておき、革が落ち着いたころにラストを抜くと、足当たりは柔らかくそれでいて型崩れをしないという靴が出来上がります。
こんなふうに書くと、あたかもグッドイヤーウェルテッドの靴は簡単に作られるような印象を受けてしまうかもしれませんが、
グッドイヤーウェルテッドは製法の中でもかなり手間のかか製法で、製法としては高級な靴のための製法とされています。
それ以上にハンドソーンウェルテッドは手間がたくさんかかる製法なのですが、
かかった手間以上に靴として優れていますので、
私たちはハンドソーンウェルテッドの靴をたくさんの方に履いていただいて、靴はこんなに履きやすいということを知っていただきたいと思っています。
グッドイヤーウェルテッドに関して、やはり大量生産では限界があって、たしかに効率が良いのは間違いありませんが、
そのことで犠牲にしていることもたくさんあることを知っておいてください。
だからと言って、ハンドソーンウェルテッドは作業効率を考えていないわけではなく、
あくまでも方向性の違いと考えていただけると良いと思います。
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