ハンドソーンウェルテッドの靴のインソールは基本的に交換することができず、インソールがダメになったら靴を履くことができなくなってしまうので、良い状態を保っていただきたいと考えています。
インソールの良くない状態とは、色が黒ずんでいて表面に亀裂が入っている状態です。
こちらが新しい状態のインソール。
薄ベージュと薄ピンクの中間色のような色をしています。
そして、たまたま修理でお預かりしているTさんのチャッカブーツですが、こちらは非常に良い状態を保っているお手本のようなものです。
後ろ半分はインソックが敷いてあるので元々の色を保っているのに対し、前半分は直接足が乗るので履き方によって少しずつ色が変わってきます。
ですが、このTさんのチャッカブーツはしっかりとローテーションをして履いてくださっているようなので、こんなに良い状態です。
では、どんなふうに履くと良くない状態になってしまうのかということですが、一番よくある例は十分に休ませずに履いたり、場合によっては何日も立て続けに履いてしまうと、すぐにインソールが黒ずんで、その先にあるのはインソールの割れです。
靴が完成してお渡しする時に、お客様には少なくとも2ないし3日くらいは休ませて履いていただくことをお願いしていますが、ちょっとくらいならと続けて履いてしまっている方が多いようです。
そうすると、湿気が靴の中にたまってしまい、インソールを劣化させるだけでなくウェルトを縫っている糸をも劣化させてしまうことになります。
その結果として、ウェルトを縫っている糸が切れたり、インソールの裏側に加工してあるリブが炭化してボロボロになってしまい、修理をすることすらできなくなってしまうこともあります。
ぜひお手元の靴のインソールの状態を確認していただいて、このTさんのチャッカブーツよりも明らかに色が濃くなっているようであればお休みが足りていないということをご理解ください。
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細かいことを聞いて申し訳ございませんが、「交換できない」というのは技術的な問題か手間の問題か、もしくはそれ以外の要素からでしょうか。
ビスポークなので木型もありますしインソールを再製作することもできるのでは、と考えました。
田舎の靴好き様、コメントありがとうございます。
おそらく靴に詳しい方でしたら同じようなことを考えられたのではないかと思います。
代表してのご質問、ありがとうございます。
結論から申し上げますと、インソールを交換することは可能です。
物理的には不可能ではないのですが、これがなかなか大変な作業になります。
靴好きの方であればご存じかと思いますが、インソールを交換するには、ヒールやソール、ボトムフィラーを外し、ウェルトも外し、完全にアッパーだけの状態にします。
そして、新しいインソールはラストを元にして作ります。
こうして書くと簡単な作業のようにも感じられるかもしれませんが、実際には普通に靴を1足作る作業のほかに、靴を傷つけないようにとっても注意深く丁寧にばらす作業(これが思いのほか手間がかかります)も必要になります。
また、一度靴になったアッパーを新しいインソールを使って再度ラスティングするには、アッパーの状態によっては割れや裂けのリスクがあったり、ラスティングアローランス(つり込みしろ)がほとんどないことや、ウェルティングの際の穴の部分を噛んで引かなくてはいけないことから裂けてしまうリスクなどがあります。
また、新しく製作するインソールは微妙な形状の違いで履き心地が全く違ってしまう可能性もあります。
インソールの革の個体によって微妙に厚さの違いがあったりすると、アッパーの元の穴に合わせてウェルトを縫っても靴の容積は変わってしまいます。
結果、費用は新たに靴を作る場合と変わらないこと、もしくはそれを上回ること、作業の途中でアッパーが再生不能に壊れてしまうリスクがあること、費用を費やしてインソールを新しいものにしても思っていたほどの履き心地を得られないリスクがあることなどを考えて、インソールを交換するメリットは少ないと判断し、インソールは交換できないということにさせていただきました。
作り手の気持ちからすれば、インソールを大切に履いていただくこと=靴を良い状態に保つことということであり、靴を大切に履いてくださいという願いを込めている部分もあります。
大変よく分かりました。
結論として「インソール交換はできない」と書くことに十分な妥当性があることが理解できました。
感謝申し上げます。