タックス(tacks)とは、いわゆるクギのこと。
靴の世界に入って物心ついた時からそう呼んでいたので今となっては何の違和感もありませんが、イギリスでも同じようにtacksと呼んでいたので、ずっと変わらずtacksで慣れ親しんでいます。
タックスとは靴で使う釘の中のひとつの種類というのが正しいと思うのですが、一般的にクギの英語であるnailも使います。
ともあれ、実物をご覧ください。
こういうものです。
私が使っているのは16mmのモノと19mmのものなのですが、女性用の靴ではもっと短い11mmのモノも使うようです。
このタックスの最大の特徴として、足先が細くなっていて硬いものにぶつかると曲がって引っかかりになるということが挙げられます。
ラストの裏側には鉄板が付いているものがありまして、たとえばつり込んだ時に底側からこのタックスを打つと、タックスの先が鉄板に当たって曲がり、抜けなくなるのとともに、ラストを抜いた時でもタックスの先は曲がっているので足に向かって突き出ていないという形状になります。
言葉で説明するのはちょっと難しいので、とりあえず靴を作る時に使うとご理解ください。
そんなタックスですが、少し前にこのタックスを作っている会社が廃業しただか生産をやめただかで靴の材料屋さんから一斉になくなってしまい、大騒ぎになったことがありました。
私に関しては、幸いなことに他の方々が使わない長さのタックスを使っていたので、たまたま行った材料屋さんで在庫があってを買うことができたのですが、その次はもうどうしようかと困っていたところでした。
ただ、私がイギリスの学校で靴作りを学んでいた時にもほとんど同じようなタックスを使っていましたし、中国やそのほかの国々でもおそらく似たようなものを使っているでしょうから、全く入手することができなくなるとは思っていなかったので、在庫が少なくなってきたら探そうかくらいに考えていたのでした。
そんな中、たまたまネット通販のアリエクスプレス(通称アリエク)でタックスを見つけまして、どれくらいのクオリティのモノなのか興味があって買ってみました。
それがこちら。
長さは私が使っているものと同じ16mmです。
足先の形状は、日本製のモノの方が細くとがっている部分が長いようですが、パッと見たところでは問題はなさそうです。
まだ到着したばかりで使っていないので、ちょっと試しに使ってみようと思っています。
ちなみに、価格は300本で900円強といったところなので、これまでのものに比べるとそこそこ割高になります。
これまでに靴の材料においてはシャンクが無くなったり、ウェルトを縫うための針が無くなったりと、もう常に工具や材料入手できなってしまうこととの戦いが続いています。
その度に新たな入手先を探して乗り越えてきたのですが、その労力はなかなか大変なものです。
世界中で靴が作られているとはいえ、工具や材料が変わってしまうと使い勝手が変わったり新たにそれに慣れないといけないため、作り手としては決して嬉しいことではありません。
なので、見つける度にこうして情報を発信して困っている仲間たちに届いて何とか役に立てばと思っています。
心配は尽きませんね。
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