ウェルティングの糸

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ハンドソーンウェルテッドの靴は、ほとんどの工程を手作業で行います。

その中でも、名称にも使われている「ウェルティング」を手作業で行う工程は、非常に手間と時間のかかる作業です。

だいたい、手作業でウェルトを縫う作業自体がとっても手間のかかる作業なのに、そのウェルトを縫う糸も自分で加工する必要があるのです。

ウェルティングに使う糸は、いわゆる麻糸の9本撚りのものを使うのですが、麻糸は売っている状態では強度や耐久性が足りないので、それに松脂とオイルをブレンドして作るワックスを塗るのです。

日本では「チャン」と呼ばれていますが、なぜチャンなのかは私は知りません。

昔、年配の職人さんに聞いたことがありますが、

「チャンはチャンだからチャンなんだよ。」

と、要領を得ない答えしか出てこなかった記憶があります。

それはともかくとして、松脂とサラダ油を鍋てコトコトと煮込んで作ります。

サラダ油を入れるのは硬さの調整の為。

松脂だけでは硬すぎてちょっと使えないので、適度な硬さにするためにサラダ油を加えます。

さらに言えば、季節によって気温が違うので、その季節に合った硬さになるようにサラダ油の量を調整します。

そうしてできた松脂ブレンドのワックスを糸に塗るのですが、これがまた手間のかかる作業で、厚手の革に包んだ松脂ワックスを糸にこすりつけて熱で溶かし、

さらにそれを乾いた丈夫な布でしごいてさらに溶かして糸の内部まで浸透させ、

その表面にビーズワックスを塗って完成になります。

そうして出来上がったのがこちらの糸。

糸

これで8足分。

ビーズワックスは、少し多めに塗っておくと、途中で糸の通りが渋くならなくて良いです。

糸

この糸は、片足につき1本、つまり1足で2本使い、1本あたりの長さが約5メートルほどです。

松脂を糸に塗る作業とビーズワックスを塗る作業は大したことないのですが、松脂がついた糸を乾いた布でしごいて熱で溶かしながら内部に浸透させるのは、かなりの力仕事でけっこう大変です。

とりあえず、今日もそうやってひとつの難関を乗り越えました。

ラスティングとかウェルティングは、作業自体がとっても大変なのは間違いありませんが、その作業を終えた時に十分すぎる達成感があるのに対し、この糸つくりの作業は頑張った割にはこれだけ感が半端なく、将来的には何とかしたいものです。

以前に仕事で中国の靴の工場に行った時に、あちらでは松脂が塗られた糸が商品として売られているということを聞き、その時はすごく羨ましかったのですが、でもやっぱり考えてみるとこういう糸にせよそのほかの消耗品にせよ、細かい仕様迄自分がやりやすい状態になっているのが嬉しいので、糸づくりは非常に面倒ですがやっぱり自分で作らないと納得がいかないのだろうなぁって思っています。

 

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