■ VOICE vol.05-005(発行:2005/09/01)
【ハンドソーンウェルテッドの魅力】
最近、ハンドメードの靴が脚光を浴びています。

その代表的な製法がハンドソーンウェルテッドですが、量産型のグッドイヤーウェルテッドと何がどう違い、それぞれどのような特徴を持っているのかを考えてみたいと思います。

まず、グッドイヤーウェルテッドは19世紀後半にアメリカのチャールズ・グッドイヤーJr.により考案された量産を目的とする機械による生産方法で、それまでの手作業と比べ生産量を飛躍的に増加することが可能となりました。

ハンドソーンウェルテッドとグッドイヤーウェルテッドは、どちらも基本的な靴の作り方もほとんど同じで、中底に取りつけられたリブにアッパーとウェルトを縫い付けるということに違いはありません。

しかしながら、同じアッパーをハンドソーンウェルテッドとグッドイヤーウェルテッドで作った場合、完成した靴には言葉ではうまく表現できませんが、外観に於いても雰囲気の違いを感じます。

それはなぜなのでしょうか?

ひとつ言えることは、リブの構造が若干違うため、グッドイヤーの方が腰高になってしまいます。これをグッドイヤーらしいと判断するのか、好きか嫌いかは個人の好みなので甲乙は付けられません。ですが、スマートに見えるという点では、ハンドソーンに軍配が上がると私は思います。

次に、クオリティの違いを見てみましょう。

実のところ、これも甲乙つけ難いと思います。グッドイヤーの場合は、トゥラスターでつま先を釣り、カカト周りを機械でまとめた後、土踏まず周辺は手作業でまとめることが多いので、型くずれの問題は手作業の場合と大きな違いはありません。但し、これは機械を使いこなしている場合で、適当なテンションがかけられている場合の話です。ハンドソーンの場合は、つま先もカカト周りも手作業ですので、やはり適当なテンションで引かなければ意味がありません。

しかしながら、グッドイヤーの釣り込みは一度に引いてしまうのに対し、ハンドソーンの場合は釣り込み、クギを倒す時、そしてウェルトをかける時という具合いに三度に分けてアッパーを引くので、条件的にはハンドソーンの方が多少型くずれしにくいと言えるでしょう。

また、グッドイヤーの場合は、品質のバラつきが比較的少ないのに対し、ハンドソーンの場合は一足ごとに作り手が自由に表現でき、その際に素材の特徴を最大限に生かすことも可能というメリットがあります。スペック的に見ると、以上のような差があります。

ですが、やはり機械で作ったものと手で作ったものとでは、優しさという点で大きな違いがあるように感じます。ほぼ同じ行程を踏んでいるのに、とても不思議です。

更にハンドソーンには奥深い魅力があるように感じます。具体的にどう違うのかわかりません。もしかしたら、イメージに振り回されているだけかもしれません。それでも、この靴の履き心地はあなたをきっと優しくします。本当に不思議です。

ハンドソーンウェルテッドの魅力はそこにあります。

欲を言えば、いつの日か世界中が優しさでいっぱいになるようにという野心を持ちつつ、私たちはこれからもこの靴を作り続けたいと思います。


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