ハンドソーンウェルテッドの靴を製作するうえで、非常に重要なもののひとつに松脂のワックス(通称チャン)があります。
これは、ウェルトをインソールのリブに縫い付ける際の糸に塗るのですが、そのあたりをざっと説明させていただきます。
セメンテッドという製法の靴は、ラスティングが完了した状態のアッパーとソールを接着剤で貼り合わせるのに対して、
ハンドソーンウェルテッドやグッドイヤーウェルテッドの靴は、ラスティングが終わった状態の靴のインソールの裏側のリブに、ウェルトを縫い付けるという作業があります。
グッドイヤーウェルテッドとハンドソーンウェルテッドではリブの形状は違うのですが、ウェルトをリブに縫い付けるのは共通です。
ウェルトを縫い付けるときに使う糸は基本的に麻糸を使いまして(化学繊維の糸を使うところもあるようです)、
その麻糸を保護するために松脂のワックスでコートをします。
今日は、その松脂のワックスを作ります。
そんなもの、初めから出来合いのものがあればよいのにと思うかもしれませんが、これがなかなかそう簡単にいかなくて、
グッドイヤーウェルテッドの場合は、機械で加熱してガシャガシャと縫うため、かなりべとべとで柔らかい野に対し、
ハンドソーンウェルテッドの場合は、手作業で縫うためにあまりべとべとで柔らかいとあちらこちらを汚してしまったり、作業性も良くないため、ちょっと硬めになっています。
その目的に合わせて、さらにその時の気温にも合わせて硬さを決めます。
みんなそれぞれやり方は異なりますが、やっていることは同じだと思います。
要は、松脂に精製した油を加えて加熱するということです。
この作業、じつはすごい煙と臭いなので私の場合はカセットコンロを使って外でやります。
松脂自体は、靴の材料屋さんで購入することができます。
私は鍋でコトコト温めて柔らかくして、そこにサラダ油を加えて少し柔らかくします。
松脂がしっかりと溶けて油と混ざったら、水を張ったバケツの中にこの熱々の松脂ワックスを入れて、水の中で冷やしながら固めます。
ちなみに、この作業が結構大変で、水の中だから冷えているだろうと思ってワックスを持ち上げると、外側だけは冷えて固まっているのに、中から溶岩のようにドロドロと熱々の松脂ワックスが流れ出すのです。
ボーとしていると火傷します。
そうして出来上がった松脂ワックスをある程度まとめると、こんな感じになります。
これをピンと張った糸に塗り、そのあとに布でしごいて溶かしながら中まで松脂ワックスを染み込ませ、
その後表面にビーズワックスを塗って糸が完成となります。
糸は両足で2本必要ですが、その2本を作るのに15~20分くらいかかります。
この作業はいい加減にやってしまうと糸の強度が出ないため、絶対に手を抜けません。
糸に松脂ワックスを塗り、布でしごいた時点で一度糸の状態を確認するのですが、十分に中まで染み込んでいないと糸はフニャフニャでいかにも頼りなさげな感じです。
松脂ワックスが足りなければ何度でも塗り込んで、十分な強度を持った糸を作ります。
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