お客様のTMさんから修理のご依頼が来ました。 TMさんによると、何かの拍子にガツンとコバをぶつけてしまい、ウェルトを縫っている糸が切れてしまったとのこと。 うーん、通常であればぶつけたくらいで糸が切れることはないはずなのですが、いずれにしても状態の確認もしたいのでさっそく修理に取り掛かりました。 ソールを剥がすのは、ハンドソーンウェルテッドの靴なら比較的簡単です。 ヒールを固定している10本のマシンネイルを抜き、をだし縫いの糸をナイフでプチプチプチと切れば、ポロンとソールがとれます。 そして、ウェルトを縫っている糸が切れてしまった原因を確認したところ、やはり思った通りでした。 原因は、靴の中に残った湿気で糸に塗ってあった松脂ワックスが剥がれて、糸の強度が落ちていました。 ハンドソーンウェルテッドの靴は、その構造上の理由や製作方法に関する理由で、グッドイヤーウェルテッドのように糸にベチャベチャに松脂を塗りません。 でも、しっかりと糸の中に染み込むようにしているので、強度的に弱いということはありません。 私も、結構荒っぽく(テストのためです)履いていた靴をバラしてみましたが、糸が弱っているような状態は見られませんでした。 ですが、1日履いて十分に休ませないでまた履いてしまうとか、保管の状態が湿気の多いコンクリートやタイルの上だったりすると、靴の中にたまっている湿気が十分に排出されないので、どんどん靴の中にたまってしまい、インソールの裏側のウェルトを縫っている糸を弱くしてしまいます。 それなら、もっと強度のある糸を使えば良いということを言われるかもしれませんが、それは以前にも書いた通り糸が切れるということはインソールの裏側のリブをダメージを与えないということなのです。 強度的に修理が可能な糸の方が、修理ができないリブよりも弱くしておくことで、壊れてもまた元通りに戻せます。 TMさんの靴は、そろそろオールソール交換のタイミングでしたので、良いタイミングだったと思います。 なかなか確認できない靴の内部を確認し、必要があれば栄養の補給をして、ウェルトをかけなおして、ボトムフィラーのコルクは新しいものをセットして、新しいソールを貼りました。 このあとは、後日だし縫いをかけて、新しいヒールを取り付けて、仕上げをして完成になります。 当たり前ですが、新しいウェルトですのでまだだし縫いの穴はありません。 これはハンドソーンウェルテッドの靴を履いている方にお伝えしたいのですが、ウェルトを縫っている糸が切れてしまうような履き方をしていると、インソール自体が硬くなって炭化して亀裂が入ってしまったり、インソールの裏側にあるリブが硬化してもろくなってしまう可能性が十分に考えられます。 もし、お履きの靴のインソールが少し黒っぽくなって来たら、それは湿気が十分に抜けていないことを意味しています。 もう少し休ませる時間を長くとって、靴の湿気が十分に抜けた状態で履くようにしてください。 ★★★お知らせ★★★ #SRF×オックスフォードは、オーダー受付中です(16足限定)。詳細はこちら。 シューリパブリックでは、日常仕様の快適オーダー靴をお作りしています。 今週末のスケジュールはこちら。 旧ブログ(2016年3月25日まで)はこちら。 メールアドレスは info@shoe-republic.com です。
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■ 高山純一 ■ Shoe Republic の代表及びクリエーターとして靴の製作を担当しています。 |
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